▲男性への贈り物
今回は女性目線からのお話です。
私は男性への贈り物を選ぶ時、その方の趣味嗜好を知らない場合、想像力をMAXに働かせてもなかなか決められません。
皆様はいかがでしょうか。
チェルシーオールドにはいろんなタイプの男性のお客様がご来店されます。
アンティークが大好きでお一人で来店され一つ一つ時間をかけて商品をご覧になる方、
奥様と一緒に選ぶ時間を楽しむ方、友人と宝探しをする少年のように探す方など。
そんな男性のお客様との接客の中で、男性への贈り物選びに困った時に役立つヒントをいただくことがあります。
例えば、楽しそうに店内をご覧になる奥様と、初めてのアンティークに目を慣らすご主人さま。
そんなご主人さまに商品の材質や希少価値の高さについてお話をさせて頂くと、今まで全体を眺めていた視線が急にそのアンティークにピントが合う瞬間があります。
そのいくつかをご紹介させて頂きますね。
まずはこちらの画像↑「ヴァセリンのランプシェード」。
ヴァセリンガラス(英語でウランガラス)は、チェコのボヘミアを発祥地として各地に広がり、1830年代から1940年頃までの間に製造されたものが殆どです。
日本では大正から昭和初期にかけて大量に作られており、戦前のSLや電車の前照灯内部の反射鏡部分にもウランガラスが使用されていました。
ヴァセリンガラスには着色剤としてウランが使われています。
ウランと聞くと人体に影響があるのではないかと心配になりますが、着色に使用されているウランは極微量で、自然界と同じ程度の量です。製品を使っている分には問題ないのですが、現在では民間でウランを扱うのが難しくなり極少量しか生産されていないため、希少価値が高いガラスです。
ウランはもともと紀元後79年頃からガラス製品に使用されていましたが、元素としてのウランが発見されたのは1789年です。
発見したのはドイツの化学者クロプロートで、鉱山から採れる黒い鉱物から新しい元素を発見し、これを同時期に発見された天王星(Uranus)にちなんで「ウラン」と名づけられました。
ヴァセリンガラスは淡い黄色や緑色の色彩を放ち、紫外線(ブラックライト)で照らされると緑色に妖しく輝き蛍光を発するという特徴がありますが、ブラックライトが誕生するまでは、朝日や夕日に照らされた時に発する蛍光色を楽しんだそうです。自然界の紫外線なのでブラックライトで照らした時ほどの輝き方はありませんが、季節やお天気によって光の違いを楽しむのも趣を感じますね。
このように希少価値の高いガラスであるお話をさせて頂くと、大変興味をもって頂きます。
▲ステンドグラスの着色
続いてご紹介するのは、ステンドグラスの着色剤と技法についてです。
ステンドグラスは、もともとは宮殿や富裕層の家に取り付けられたり、
教会で字が読めない人に聖書の意味を伝えるために作られたりと、高価な物でした。
産業革命と共に機械化が進み、ステンドグラスも買いやすい価格となったことで、
当時、一般住宅に取り付けるのが流行り始めたそうです。
当店のステンドグラスは、その頃の物ばかりです。
ガラスの製造や着色技法も時代とともに変化しており、その時代の特徴が完成したガラスの表情となり、経過年数というエッセンスが加わりどれも個性的です。
こちらの画像↑のステンドグラス、鮮やかな赤色には、当時は金が使われていました。
多色使われていて、さらに淡い色を着色したステンドグラスは買い付け時になかなか見つかりません。
また、各枠の中央の丸い部分を「ロンデルガラス」と言います。
遠心力を利用してできたロンデルガラスがポイントとなっているステンドグラスも買い付け時になかなか出会えず、希少価値の高いステンドグラスのひとつです。
希少価値が高い箇所が集まり、経過年数によるガラスの表情が相重なり、個性的な魅力あるステンドグラスですね。
こんなお話にも、興味を示して頂きます。
▲書斎を演出するピューター製品
余談ですが、男の書斎という有名店がございます。大人の男心をくすぐるアイテムがたくさん揃っています。
足を運ばれる方もたくさんいらっしゃると思います。
書斎=男性 そんなイメージが強いと思いませんか?
書斎=男性=落ち着いた雰囲気=こだわりのアイテム…と連想が広がります。
アンティークの中でも、この書斎のイメージに合うアイテムのひとつに「ピューター製品」が挙がります。
(英語:ピューター、フランス語:エタン、日本語:錫(すず))
ピューターとは、錫を主成分として銅とアンチモンを混合した合金で、その特徴は非常に柔らかく、加工し易い事です。
古くからイギリスに錫の鉱山があり、ピューターはイギリスを中心にヨーロッパ中で利用されてきました。 錫は人体に無害でイオンの効果で水をまろやかにすると言われていて、中世以降は食器などに使われていたことが多かったようです。
現在も錫型酒器としてお酒の種類に適した型の器があります。こだわる方は使っていらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、錫には毒性があるのではないかと思われる方がいるのも事実です。
おそらくそれは、このようなイメージから起きるのかもしれません。
・昔は錫に限らず金属の採掘現場などで長期的に作業する採掘員に粉塵被害があったことからの誤解。
・有機スズが環境ホルモンとして有害であるが、ピューター製品は人工的に作られた化学物質なので使われている錫(無機錫)とは基本的に無関係な物質であることの混同。
・昔、加工をしやすくするために錫に微量に鉛を含ませた工業製品があったようです。19世紀には鉛は人体に影響があることが分かっていたようで、その当時から正しく製造している会社の製品は、鉛を含んだ合金は食器など口に触れる器の素材として使用されることはありません。
プラスチック製品が大量に出回るにつれて、ピューター製品はその勢いに押されてしまいましたが、チェルシーオールドにあるピューター製品は存在感たっぷりの姿で佇んでいます。錫は錆びないので、アンティークとしての素材の質感がいい表情をしています。
前述に、男性の書斎に合うと記述しましたが、私はシャビーな雰囲気の中に置いても素敵だと思います。結構オールマイティな雑貨として活躍する実力派かもしれません。
<上記写真の商品はSOLDとなっております。ご了承ください。>